売却中に売主が亡くなってしまったら
不動産の売買では、現金購入割合は多くなく大体の場合においてローンが利用されます。
売ります、買いますという約束は売買契約で交わされますが、金融機関はその書面を以って融資の準備に移りますので、実際にお金が準備出来るまでには1ヶ月程度の期間を要します。
1ヶ月とは言え期間が空きますからその間に何か起こる可能性は否定できません。
売買契約後の帰り道で事故に会い・・・、という事もありえます。
では当事者が無くなってしまった場合、一体どうなるのでしょうか?
売主が亡くなった場合、契約後であれば取引は有効です。
ただし、相続が発生しているため、所有権の移転時には相続登記がされている必要があります。
相続人が複数の場合、全員の協力が必要になるため相続人にとっては面倒事です。
一方で買主が売買契約後に亡くなった場合はどうでしょうか。
この場合も基本は相続が発生し、相続人に権利が移行します。
売主との違いは相続人に支払能力があるかどうかです。
例えば自宅を建てる目的でその不動産を購入する予定だった場合、おおよそ買主はご主人で、ご主人名義で住宅ローン審査をしていると想定されます。
住宅ローンの審査はご主人の属性を基になされているため、相続されると考えられる奥様に同じような属性がある可能性は低いです。
するとそもそもローンの前提が崩れますから、融資の話自体が無くなります。
この状態でも「買え」という訳にはいきませんから、融資を受けての不動産売買契約書には買主保護の条項が盛り込まれています。
しかしながらこれが現金である場合、話がややこしくなります。
場合によっては相続人はその物件を必要としていない可能性もあります。
この場合は売主の意向に従う他に手だては無くなってしまいますので、事前に特約条項を付けるように対策しておかなければなりません。
では任意売却の契約締結後に売主が亡くなってしまった場合はどうでしょうか。
任意売却は債務の全てを精算できる訳ではありませんから、相続人が相続放棄をする可能性は高いでしょう。
相続人の無い不動産売却には相続財産管理人による手続きが必要で、この手続きに3か月以上の時間を要するため競売の申し立てが入っている場合には、競売に進んでしまう可能性が高そうです。
また競売申し立て前であったとしても、金融機関からの待ったが掛かる恐れがあります。
契約は解除になってしまうと考えられます。
一方、任意売却締結後に買主が無くなってしまった場合、売主にとってはかなり深刻です。
契約が白紙になる可能性が高く、そうなると金融機関が競売に移行しかねません。
こういった事態についても金融機関と事前に打ち合わせていないといけないのです。
人間万事塞翁が馬とはよく言ったもので、不動産取引においては何が起こっても良いように常に想像力が求められるのです。